ボードレールが示したように、偉大な物語作家ポーは、
批判的な分析家、推理家、謎解きではなく、魂のより暗い領域こそ彼本来の関心事であり、
知性が好んで無視してしまうような意識下の感性の生活を、意識の表面にもちあげる力をそなえた作家なのである。
ポーの中のこの要素こそ、ボードレールを強くひきつけ、
彼をしてサント・ブーヴにポーの＜深み＞を研究するよううながすに至らしめたものであった。
精神分析家の批評が探求してきたものもこの要素に他ならず、
ひきつづき幾世代ものフランスの読者に驚異的人気を博し、高い評価をえさしめたものである。
本書はフランスでのポー理解を探求し、その出発点となったボードレールと、
彼のすぐれたポー翻訳の果した役割を明らかにする。